2012年4月9日月曜日

細胞壁 - Wikipedia


細胞壁(さいぼうへき)は、植物や菌類、細菌類の細胞にみられる構造。動物細胞には存在しない。細胞膜の外側に位置するために細胞外マトリクスの1つである。

細胞壁を形成する物質は、植物ではセルロースで、これはグルコース(ブドウ糖)がいくつもつながって出来ている糖鎖である。他にも、リグニンやペクチンのようなものもある。細胞壁は、二重構造(一次壁・二次壁)になっていて、たえず成長を繰り返している。細胞壁の主な役割は、防御(細胞膜から内側を守る)、改築・補強、物質補給、細胞間連絡、影響感知細胞である。また、細胞壁の分子間は微細ではない為、水・ナトリウムイオン・カリウムイオンなどを容易に通す。通常、植物細胞は緑色をしているが、木などは茶色をしている。これは、細胞壁がリグニンによって木化したためで、通常の細胞壁よりも硬い。

[編集] 植物の細胞壁

植物の細胞壁は、その構成が細胞の生長とともに変化する。細胞壁で分けられるべき細胞の相は以下の2点である。

  • 生長中の柔細胞
  • 生長期終了後のざい

この2つの細胞壁の成分はほぼ同じであるが、構成する成分の比率がそれぞれ異なっている。細胞壁は細胞の形状や大きさを決定しているものであるが、生長を必要としない材に至るとより強固な構造を必要とするようになる。

生長中の細胞壁は一次細胞壁(いちじ-)という薄い細胞壁からなる。また細胞と細胞の間には中層(ちゅうそう)と呼ばれる層が確認できる。生長終了後の細胞は一次細胞壁の内側に二次細胞壁(にじ-)という2,3層からなる細胞壁を形成する。また一次細胞壁および中層ではリグニンが沈着し、細胞壁を構成する繊維(微繊維、後述する)を強固に密着させて物理化学的強度を向上させる。

一次細胞壁および二次細胞壁の主要な構成成分はセルロースである。セルロースとはd-グルコースがβ(1→4)結合で分枝無くつながっている糖鎖である。グルコースの数はおよそ2000-15000個ほどと言われている。セルロースの構成する細胞壁繊維は以下の構造的段階を示している。


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  1. セルロース分子:グルコース約5,000個のポリマー
  2. 結晶性ミセル:セルロース分子が約40本、水素結合でまとまっている構造体、直径5nm
  3. 微繊維びせんい):結晶性ミセルが数個集まった構造、直径30nm

微繊維の集合体が細胞壁であるが、微繊維間には

  • ミセル間隙(-かんげき):幅1nm
  • 微繊維間隙:幅10nm

という空隙が存在する。この空隙には非セルロース系多糖類、ヘミセルロースマトリクスが満たされており、微繊維間の構造的強度を高めている。

また、生長期終了後の細胞壁に多く見られるリグニンはポリフェノール化合物の重合体で立体構造がいまだ明らかになっていない複雑な生体分子である。リグニンは生長中の細胞にもわずかながら見られる。「したがって、植物の細胞壁の主要構成成分は、

の3つと言える[要出典]」と言われた[誰?]。高等植物の材に占める割合はセルロース50%、ヘミセルロースおよびリグニンがそれぞれ25%程度である。

また、細胞壁には酵素が含まれている。これらの酵素は細胞膜外にでているために細胞外酵素として扱われる。これらの酵素は主に細胞壁の構築や物質の取り込みに関係していることが知られている。

[編集] 菌類の細胞壁

真の菌類においては、細胞壁はキチンなどで構成されている。かつてはセルロースを持つ場合もあるとの記述があったが、これは卵菌類のものである。この類は、現在ではストラメのパイルに属するものとして、分類の上での菌類から除外された。

細胞壁の構成は、群によってやや異なる。子嚢菌や担子菌の多くでは、キチン-グルカンを主成分としていることが知られる。接合菌ではキチン-キトサン、が、また出芽酵母などではマンナン-グルカンという特殊な構成も知られる (以上?(どこからどこまで?)、出典はウェブスター、p.59)。


どのように多くの各遺伝子のコピーを各人が持っていない

[編集] 真正細菌の細胞壁

真正細菌は莢膜を含む細胞表層構造体の違いにより、

の二つに分けられる。この両菌はグラム染色によって判別が可能である。これらは構造的に異なる細胞壁をそれぞれ所持しているが、細胞壁の主要な構成成分はペプチドグリカン(糖鎖とペプチドの化合物)と言われる物質である。なお、ペプチドグリカンは後述する一部のアーキア(古細菌ないし始原菌)も細胞壁構成成分として所持しているが、分子構造が決定的に異なるために、以下の分類がなされる。

したがって、本項ではまずペプチドグリカンの一種であるムレインの構造について述べる。

ムレインは、糖鎖およびペプチド鎖からなる二種類の鎖からなる。

以上の二種類の鎖は、以下の結合様式で結合し網目構造をとっている。

  • N-アセチルムラミン酸のカルボキシル基とl-アラニンのアミド結合
  • d-アラニンと隣り合うのテトラペプチドのメソ-ジアミノピメリン酸の遊離アミノ基のペプチド結合

すなわち、グリカン鎖が平行に並んでおり、N-アセチルムラミン酸に結合しているテトラペプチド同士が互いに結合し合いグリカン鎖に対して垂直方向への構造的強度を高めているまたテトラペプチド鎖は細胞膜側にも結合できるようになっており、これで細胞膜および細胞壁の結合をより強固なものにしている[要出典]

上記のムレインの構造は、グラム陰性菌においてはほとんど例外は見られないが、グラム陽性菌においては、テトラペプチド鎖のメソ-ジアミノピメリン酸がジアミノ酸となっているなど分類学上の指標となりうる多様性を持っている

グラム陽性菌の細胞壁
グラム陽性菌の細胞壁は10~100nmの厚さを有し、グラム陰性菌に比べてかなりの厚みを持っている。この細胞壁は主成分ムレインからなる複雑な微細構造を形成している。また細胞壁にはタイコ酸といわれるアルコールとリン酸基の化合物が含まれている。


哺乳類は、ロッドとコーンを持っています

グラム陰性菌の細胞壁
グラム陰性菌の細胞壁はムレイン以外にも外膜がいまく)と呼ばれる生体膜からなる。厚さは10nm程度(ムレイン2nm、外膜8nm)であり、細胞壁中のムレインの占める割合はグラム陽性菌に比べて極めて低い(5~10%程度)。

ムレインはグリカン鎖が1あるいは2層からなる単分子層あるいは二分子層であり、その外側にタンパク質、脂質、リポ多糖からなる外膜が存在する。外膜に存在しているリポ多糖はリピドAという複合脂質および様々な糖を含む多糖からなる。リポ多糖は「グラム陰性菌の主要抗原決定物質[要出典]」と言われておりレセプターや毒素の機能を持っている。

また、グラム陽性および陰性菌ともに存在するが、細胞膜と細胞壁の間にペリプラズム空間と言う空隙を有している。この空間には生体エネルギーや物質取り込みに関する多くの酵素が確認されている[要出典]

[編集] アーキアの細胞壁

アーキアの細胞壁は植物や真正細菌のものと極めて性状が異なっており、3ドメインを裏付ける証拠のひとつとなっている。細胞表層構造物質は多岐にわたっているが、主な細胞壁はS-レイヤーとシュードムレインである。このうちシュードムレインとメタノコンドロイチンがグラム陽性に染まる。シュードムレインは細菌の細胞壁、メタノコンドロイチンは動物の結合組織に類似する。

その他に下記のようなものが存在する

S層

ほとんどのアーキアの細胞壁はS層(S-レイヤー)そのものが細胞壁になっている。S層の構成成分は糖タンパク質あるいは単純タンパク質である。熱に対して極めて高い安定性を示すが、浸透圧に対しては極めて感受性が高く、多くのS層は純水で菌体を洗浄すると細胞壁の構造が解ける。


S-レイヤーは1本のペプチドの先から4本のペプチドが放射状に出ている立体構造を示しており、それらの放射状のペプチドが隣り合うS-レイヤーのペプチドと結合し、縦横の構造的安定性を高めている。軸となるペプチドは細胞膜と結合している。放射状のペプチドの下部は擬似ペリプラズム空間を形成しており、真正細菌と同様プロテアーゼなどいくつかの栄養分の細胞内輸送に関する酵素が見られる。

シュードムレイン

シュードムレインはグリカン鎖およびペプチドの化合物という点でペプチドグリカンの一種であるが、真正細菌の有するムレインとは以下の点で異なっている。

  • グリカン鎖
    • N-アセチルグルコサミンおよびl-タロサミニュロン酸がβ(1→3)結合したものからなる(ムレインではN-アセチルムラミン酸がβ(1→4)結合している)。
    • グルコサミンの全てあるいは一部がガラクトサミンになっている。
  • ペプチド
    • d-アミノ酸を有しない(主なアミノ酸としてグルタミン酸、アラニン、リシン、全てl型)。
    • l-タロサミニュロン酸のカルボキシル基とアミド結合している点はムレインと同じ。

ペプチドとグリカン鎖の結合様式も似ているため、ムレインと同じ網目状構造を取る。厚さは15~20nm程度である。またムレインと生合成系が異なるため、細胞壁生合成系に作用する抗生物質ペニシリン、d-シクロセリン、バンコマイシン等に抵抗性を示す。


[編集] 参考文献

  • ジョン・ウェブスター/椿啓介、三浦宏一郎、山本昌木訳、『ウェブスター菌類概論』,(1985),講談社

[編集] 関連項目

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